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「会計系ファーム」とは?

2013年10月25日

最近あまりその言葉を聞かなくなってきた「会計系」ファーム。そのルーツ、特徴、value、って何でしょう?(かなり長文。力作です)
●会計ファームのルーツ(私見)  「会計系ファーム」。最近あまりこういう呼び方を聞かなくなってきましたが、私が就職活動をした90年代後半は「会計系ファーム」というものが多々ありました。アンダーセンコンサルティング、プライスウォーターハウス、中央クーパースアンドライブランド、日本アーンストアンドヤング、KPMGグローバルソリューション、デロイトトーマツ、トーマツ、アーサーアンダーセン、・・・等々。そして、殆どのファームが合従連衡によりその名称を変えて現在に至っています。現在「会計系ファーム」と呼ばれるのは、アクセンチュア、IBMビジネスコンサルティング、ベリングポイント、アビーム(最近NEC傘下になった)、トーマツ・・・等々ですよね。(順不同、漏れていたらスミマセン)  この「会計系ファーム」というのは、なんで「会計系」と言うのかといえば、私的には「昔は会計事務所のコンサルティング部隊だったから」だと理解しています。会計事務所というのはご存知の通り、決算内容を監査して、太鼓判を押す人たち。(それ以外の機能もあるのはわかってますが、取り敢えず) 決算内容を見ていると、「財務諸表のここの数字がこんなに悪いのは、ここが出来てないからだ」みたいな「経営課題」が結構見える訳です。それをコンサルティングしていたのが、恐らく会計ファームのルーツではないかと個人的には考えています。 ●BPRに伴う会計ファームの変化  この業界に大変化が起こったのが90年代半ばからの「BPR」ブーム。BPRとは「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」、即ち「業務改革」です。バブル崩壊後の企業の建て直しの一貫として「業務効率」を高めるというイシューでのコンサルティングが世の中的に流行したと聞いています。「業務改革」とは、例えば簡単に言えば「AさんがBさんに話をして、BさんがCさんに話を伝える」という業務をしていれば、「だったらAさんがCさんに直接話した方が早い」みたいな改革をする、というイメージ。めちゃくちゃ簡単に言っていますが、要するには企業の中で行われている「ルーチン業務」をとにかく効率よく作ろう、というのが「業務改革」です。  ここで重要な補足をしておきますと、事業会社においてはこの「ルーチン業務」って実はすっごく大事なんです。「ルーチン」といえば、だいたいは「同じことの繰り返し」=「アタマを使わない」=「誰でも出来る」=「付加価値が低い」・・・みたいな感じでネガティブに捉えられがちなのですが、それは違います。事業会社が「事業会社」である所以は、この「ルーチン」がしっかりと回っているからなのです。ルーチンが回っていないと全ての業務が「単発的」な訳ですよね。そうしたら、経営なんて絶対に安定しない。毎年(数%の変化はあっても)同じような売上高が計上され、同じように利益が出るのは、この「ルーチン」が脈々と回っているからなのです。  ルーチンの何が重要かというと、「多くの人が普通に仕事をするだけで、大きな価値が生み出される」ということにあります。例えば宅配便。皆さんがコンビニのレジに荷物を置くだけで、翌朝には目的地に荷物が届きますよね。あれは「ルーチン」の為せる偉業です。ルーチンが回っているからこそ、店員さんが普通にレジを打ち、集荷の人が普通に荷物を集め、長距離トラックの運転手さんが普通に車を運転し・・・という形で、誰も苦労しなくても大きなサービスが生み出されるのです。もしルーチンが回っていなければ、誰かが夜中に車を飛ばして、目的地まで必死で荷物を運ばなければなりません。ということで、ルーチンは重要。これはおわかり頂けたでし_腓Δ__  話を戻すと、「BPR」即ち業務改革というのは、この「ルーチンをいかに効率的に回すか」という部分にメスを入れる改革です。この業務改革を行うためには、膨大な人数が必要となります。考えてみて下さい。例えばセブンイレブンでもJALでも大学生協でも何でも良いです。そこで行われている業務の「全て」を改革しようとしたら、いったい何人のコンサルタントが必要になるか。例えば私が学生時代バイトをしていたコンビニの業務で言っても、受発注、レジ、給与計算、勤怠管理、検品、宅配便の受付、公共料金の支払い処理・・・と膨大な「ルーチン」業務があります。これらの「ルーチン」業務は、必ず繋がっています。繋がっているからこそ、業務として回っている訳です。なので、一部分だけを改革するのは難しかったり、効果が薄かったりします。結局は「まとめて全部やってしまえ」ということになり、膨大な業務を改革することになる。これがBPRです。  昔は、こういった「業務改革」をまずは行った上で、その「出来上がったあるべき業務」をITシステムに落とし込むというスタイルが取られていました。会計ファームの「業務コンサルタント」の人たちが、まずは業務改革をします。さっき書いたような膨大な「業務フロー」を構築する訳です。その後、会計ファームの「システムコンサルタント」の人たちが、ITベンダーと共同しながら、作った業務をIT化して行く訳です。90年代半ばまでの「業務改革」は恐らくこのスタイルだったと思います。  会計ファームはこの頃から、「決算数値を元に、業務へのアドバイスをする」役割から、「ある機能や業界に精通した、業務プロセスのプロ集団」へと姿・役割を変えて行くことになります。しかし、90年代の半ばを過ぎると、もう1つの大きなトレンドが生まれ、会計ファームは更に大きくその役割を変えていくことになります。その引き金となったのは「ERPパッケージ」の登場です。 ●ERPの登場と会計ファームの変化  「ERP」とは「エンタープライズ・リソース・プランニング」の略で、企業の持つビジネスプロセス、即ち先ほど書いた「ルーチン業務」をそのまんまITシステムに落とし込んだようなものです。それまでは、「まず業務プロセス」を作り、それを「ITシステムに落とす」というやり方をしていました。即ち、洋服で言えば「オーダーメイド」の服を作っていた訳です。しかし、オーダーメイドはコストがかかる。そこで登場したこのERPという考え方は、いわば「業務プロセスの既製服」のようなもの。世界中の優良企業の業務プロセスをベンチマークして「理想の業務プロセス」が既にシステムとして構築されているというのがERPの売り文句です。既製服だから安い上に、「世界中の企業のベストプラクティスを集めた」訳ですから、非常に仕上がりも良い。いちいち自社の業務を全て分析して、ゼロからシステムを自前で作るよりは、このERPを入れる方がよっぽど効率が良いというのがその考え方でした。  ここで大きな変化が起きてきます。通常の「業務コンサルティング」では、お客様の会社に入り込み、業務を理解して、あるべき業務を作り、それをシステム要件に落とし込むという作業があります。これこそが、コンサルタントの腕の見せ所な訳です。しかし「ERP」となった瞬間、「あるべき業務」は最初から存在しているので「業務を作ってシステムに落とす」のではなく、「フィット&ギャップを繰り返しながら、システムに業務をあわせていく」という発想の変化が起こります。それまでの業務コンサルタントは「ある機能、ある業界の業務はどうあるべきか」「最も効率的・効果的な業務を作るにはどうすれば良いか」に対しての考え方、経験、知識などが付加価値だった訳ですが、ERPになった瞬間「ERPで何が出来るのか」「お客様の業務とERPで定義されている業務の違いは何か」を考えることが、付加価値となってくる訳です。  いちから業務を設計するのはあまりに非効率。なのでERPのパッケージを使う。この辺りから、会計ファームが「システム寄り」になって行ったと私は理解しています。それが良いとか悪いとかは言っていませんので誤解無きよう。事実として「システムに寄っていった」という話です。 ●会計ファームのvalueとは?  では、こういった進化を遂げてきた「会計ファームのvalue」とは何か。私自身が「クライアント」という立場で感じた最大のvalueとは・・・  それは、「規模」です。  規模って何やねん?と言われそうですが、そのまんまです。20人、30人のコンサルタントを瞬時に送り込んで来るだけの「規模」はそれだけでvalueがあります。さっきも書きました通り、「業務改革」というのは非常に泥臭い。会社で脈々と流れている「ルーチン作業」を変革する訳です。ルーチンを変革するというのは即ち、そのルーチンに携わっている人たちの考え方や行動を全部変えないと、変わらないんです。さっきの例で言えば、Aさんは今までBさんに伝言してた訳です。それをいきなり直接Cさんに伝言しろ、と言われると戸惑う訳ですね。「なんで?」と反論するかもしれません。そういうのを、いちいち説明して説き伏せて、現場の業務を少しづつ変えていく。これはもう、めちゃくちゃ気が遠くなるぐらい大変です。少なくとも数百人単位で「仕事のやり方」を変えてもらわないと、業務は変わりませんから。  戦略系のコンサルタントは、良くも悪くも少人数です。「受発注業務を効率化させたいので、20人派遣して下さい」と言って、対応出来るファームはまず無いでしょう。(もちろん恐ろしい金額になると思いますので、現実的にそういう使い方は出来ませんが)戦略系の場合は、我々経営企画部などに「こうやってね」とやり方を教えてはくれますが、実際に現場の100人を相手にするのは経営企画の人間だったりします。その点、会計ファームの人たちは、「規模」がありますから、大量に人を送り込んで、大量に現場に入り込み、我々クライアントの事務局が四苦八苦しなくても、勝手に色々と現場の改革をやってくれます。これはもう、めっちゃくちゃ有り難い。でも、やってることは地味です。  「規模」と書くと「それはファームの価値であって、個人の価値ではないじゃないか」と言われるかもしれません。しかし、申し訳ないですがそれはTrueです。会計ファームの場合は、戦略のプロジェクトなんかと比べモノにならない程、プロジェクトがでかい。そりゃそうです。会社のルーチン業務全てを入れ替えるぐらいのインパクトがあることをやる訳ですから。ビル建てて引っ越しするのと同じぐらいのインパクトがあります。そんな大規模プロジェクトの中で、個人が1人ぐらい光ってようがあまり目立たないのは事実。持たされる領域も限定的かもしれません。しかし、それがvalueなんです。会計ファームのマネジャーは、ある意味「ゼネコン」みたいなスキルだと見ていて思います。自社メンバー、システム屋、ハードウェア屋、クライアントチーム、など色んな会社の色んな人たちを大きい場合は百人近くたばねて動かすのは、殆ど「ゼネコン」の世界。戦略系のマネジャーの場合はせいぜい動かして数人ですから、動かしている規模は全然違う。というか、使っている能力は全く別物です。  こういった業務改革のプロジェクトの場合、規模も非常に大きく、期間も相当長期に亘ります。百人ぐらいのメンバーを束ねて、数年間かけて、会社の基幹業務を全て入れ替えた後というのは、何でしょうねぇ、「瀬戸大橋が開通したぞ!!!」ぐらいの感動があるんじゃないかと個人的には想像しています。斯く言う私自身は戦略ファームに居たのでこの辺りの感覚は実は良くわからないのですが(^-^) ●最後に  以上が私の考えている「会計ファーム像」です。勿論、私自身は会計ファームで働いたことはありませんから、実際の所はどうかわかりません。ただ自分自身は昔、アンダーセンのITコンサルになってプログラムを書きたいと思っていた人間なので、恐らく基幹業務システムが全て繋がった瞬間の感動!!!というのは何となーく、わかる気がします。  戦略と会計。言い方によっては、戦略と非戦略。戦略とIT。どっちが良い悪いということではありませんが、学生の皆さんが想像している以上に「違う」仕事です。どちらの仕事をするにせよ、その「違い」をしっかりと認識した上で、正しいモチベーションを持って入社することが大切です。ただ所詮は同じ「コンサル」ですから、他の業種と比べたら共通点も非常に多い。何が同じで、何が違うのか。しっかり業界研究してみて下さいね!